◎短編

◆星の、ひとかけらさえも

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私たちはよく木に登った。

人が聞けば笑うかもしれない。
年頃の男女が深夜に何をしているかって
木に登って下らない話をしながらお握りを頬張っているのだから。

でもそれは私たちにしてみれば、とても大切な時間で
今になって考えてみれば
一番幸せな、時間だった。

木の上で、揺れる葉っぱの隙間から見える星空の中に、流れ星を見つけて願ったのは「天下泰平」。
必死に願う私の姿を見て、大事ですねって先生は嬉しそうに笑った。


もしも「天下泰平」な世の中に、私たちが出会っていたら
違う未来が、待っていたのでしょうか。


「戻りましょうか」
と、優しい先生の声に、はい、と返した素直な返事とは裏腹に
まだ、まだ、先生の側にいたくて
先生の体温を、声を、時間を
独り占めしたくて

そっと気付かれないように、先生の肩に頬を寄せた。

頬が触れたそこから伝わる体温が心なしか少し何時もより熱くて
しん、とした空気が不思議と柔らかく感じて。

離れたくない思いが強くなって、ふ、と空を見上げるときらりと一筋の光が輝いた。

『あ、流れ星。』

私たちの声が揃って、同時に空を指差す。

ー消えないでー

そんな願いは届くはずもなくて
光の行方が見えなくなると、涙が溢れそうになって。

そんな私の手を先生はそっと、握ってくれた。



私はその夜見た空を、生涯忘れないと思う。

真っ直ぐに伸びた、流れ星の道筋も
私の瞳と同じ様にうるむ月も

星の、ひとかけらさえも。






※※※※※※※※※※※※※※

超短編です。風光る絶賛読み返し中。未来を知っているから読むのが辛い。
「幸せ」とは後になって気付くものなんでしょうか。
そのときに気付いていたら、もっと大事に出来たのでしょうか。
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No title

綺麗でそこはかとなく切ない…
いつ頃のセイちゃんの感慨なんでしょうね。本誌くらい?(いや、それどころじゃないか今は)、それとも総司亡き後…でしょうか。
本当に、幸せとか大切な時間って、その瞬間はどんなに素晴らしいものかわからなくて、後になってからやっとわかるんですよね。

>絵本とか歌とか創作をすることが好きで自分でドラマ仕立てにして一人で何役もこなしブツブツ一人言言っている子どもだったんですよ。
私は子供の頃を含めて、そういう事しなかったです!やっぱり創作って才能なんだなあ。
小説なんかも大好きなんですが、雑食なので誰というのは難しいですね。強いて言えば、文章の好みよりも、物語の背景に目が向く感じでしょうか。時代物とか、外国のものとか、未来の設定とか、知らない文化を教えてくれたり非日常を味わわせてくれるものが好きです。後はもちろん登場人物の魅力ですが。

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