☆つぐない

☆つぐない 5

 ←☆つぐない 4 →真央ちゃん引退(T^T)そしてお返事。


総司とセイが家へ帰ると叔父の松本と土方はもう部屋で晩酌を始めていた。
「おめえら、どこ行ってたんだ?」
松本が土方に酒を注ぎながら二人の方をチラと見る。
そして二人のしっかりと繋がれた手元を見てニヤニヤしながら土方の肩をつついた。
「お宅の弟さんは見かけによらず手が早そうだな。」
ははは、と松本が嬉しそうに笑うと漸く気付いた二人が慌てて手を離す。
「て、て、手が早いだなんて、別に何も..!」
しどろもどろに言い訳をしている総司を置いてセイは真っ赤な顔をしたまま台所へ食事の支度に向かった。

かまどの火を調節しながら思い出すのは先ほどの西本願寺での出来事。
あの木の上に見えた幻影は不思議と怖いとは思わなかった。
むしろ、懐かしくて、暖かくて。

はっきりと幻影の中に顔かたちが見えたわけではないけれど、あれはきっと自分と沖田先生。

何となくそんな自信がセイにはあった。
そして、次に思い出すのは、彼の唇の感触...

「神谷さん、何か手伝いましょうか?」
考え事をしながら野菜を刻んでいると突然後ろから総司に声をかけられセイは小さく飛び上がる。
「あ、沖田先生、こちらは大丈夫ですよ。叔父たちとどうぞ寛いでいてください。」
総司の方を見ずに手を動かすセイを良く見れば何故か耳まで真っ赤に染めている。
まさか先ほどの口づけを思い出して恥ずかしくなっていた、とは思わない総司は寒空の下歩き回って風邪でも引いてしまったのか、と後ろから手を伸ばしてセイのおでこに掌を当てた。
「ひゃっ驚いた!」
冷たい手が突然額に当てられたのと、あまりに総司との距離が近いことに驚いたセイが慌てて一歩後ろへ後退りをする。
「ごめんなさい、顔が赤いから熱でもあるのかな、と思って。」
セイの過剰な反応に総司は申し訳なさそうに謝る。
「いえ、あの大丈夫ですから...」
顔を赤らめて目を反らす姿に総司は漸くセイの気持ちを理解するが、その恥ずかしそうにしているセイの様子があまりに可愛らしくて思わずその小さな身体をフワリと抱き寄せるとその形のよい額にちゅっと口づけを落とした。
「神谷さん、ほんと可愛い...」
総司はそう呟くと身体を少し離してセイの唇を指で撫でる。
そして優しい口づけを一つ。
ひとつ、のつもりが唇を離した後のセイの表情を見て堪らずもう一度唇を重ねる。
総司がセイを抱き締める力が強めて口づけの角度を変えようとすると、じゅっと鍋が吹き零れる音がして慌ててセイが身体を離した。
あちち、と鍋の蓋を急いで取ろうとするセイを総司は後ろから
「大丈夫ですか?」
となに食わぬ顔で覗きこむ。
「もう!大丈夫ですから沖田先生はあちらへ行っててください!」
セイはぷぅと頬を膨らませながら出来立ての煮物を盛り付けるとその皿をぐい、と総司に押し付けた。
総司は皿を受け取りながら
「ここで神谷さんを見ている方が楽しいのになぁ」
とブツブツ言っている。
セイとしてはこれ以上邪魔されては食事の支度も進まないし、何より自分の心と身体が限界だ。
早くあっちへ、と言わんばかりにセイが真っ赤な顔をして総司の背中を押しているところに叔父がやってきて
「セイ、酒はまだあるか?...と、おい。おめえら何いちゃいちゃしてんだよ。」
とからかわれてしまった。
「いちゃいちゃなんてしてませんっ!ほら、沖田先生早くあちらに行って下さい!叔父様、お酒温めて持っていきますから!」
叔父の松本までとばっちりを食らったようにセイから追い出され部屋へ帰る廊下で総司と松本は思わず顔を見合わせる。
怒られていたのに何故か嬉しそうな総司の顔を見て松本はこれまた嬉しそうに総司の腕をつつく。
「どうだい、うちの自慢の姪っ子は?」
「どうって...。あの、とても可愛らしいです...。」
恥ずかしそうに、それでも素直にそう答える総司に松本は満足そうに頷いた。


四人で賑やかな食事を終えると久しぶりに飲み過ぎた松本と元々酒が弱い土方は居間で寝てしまった。
声をかけても起きそうにない二人にセイは布団を引っ張り出してかけてやる。
頭が床だと痛いだろうから、とわざわざ枕まで用意してやるところにセイの優しさを感じて思わず総司はクスリと笑う。
「沖田先生はお部屋にお布団敷いておきますね。」
大の男二人の世話をてきぱきとこなすセイをニコニコ目で追っていた総司は、それくらい自分でやりますよ、と立ち上がりセイの後をついて用意された部屋へ入った。
セイと一緒に寝床の準備を済ませると、よし、と部屋を出ていこうとするセイの身体を後ろから抱き締める総司。
「神谷さんはどこで寝るんですか?」
「へ?え、と。自分の部屋がありますので...」
「なんだ。一緒に寝てくれるのかと思いました。」
「な、な、何言ってるんですか!」
セイの慌てぶりに総司は思わず吹き出す。
その笑いに漸く総司の冗談だと気付いたセイが安心したように自分の身体に回された大きな手をそっと上から握りしめた。
その柔らかくて暖かな感触に総司がホッとしたのも束の間、切ないような愛しくて堪らない激しい感情が沸き上がってきてセイを抱き締める力を強める。
「...神谷さん、もう少しだけ一緒にいてくれませんか...?」
少し寂しそうな、自分を求める声にセイは小さくコクリと頷いた。


月明かりの中、二人は窓辺に並んで肩を寄せる。
京都は東京とは違って空襲警報が鳴り響くことはなく、風もない今夜はとても静かな夜だ。
つい昨日まで顔も見たことがないし声も聞いたことがない人とこんな夜中にこうして隣にいるのが何だか不思議で、改めて狭い部屋に二人きりになると今更恥ずかしさが増してくる。
「神谷さんは東京のどの辺に住んでいたんですか?」
柔らかな沈黙を破ったのは総司の方でセイはホッとした顔をして答える。
「神田の辺りです。叔父も私が7つのときまで一緒に住んでいたんですよ。」
「へえ。そうなんですか!だから仲がいいんですね。本当の親子みたいだもの。」
「私が京都にきてすぐの空襲で母も父も亡くなってしまったので本当に叔父だけが家族なんです。」
セイの少し寂しそうな笑顔を見た総司が思わずその小さな手をそっと握るとセイもぎゅっと握り返してくれた。
「神谷さん..今日からは、私も側にいますから。」
総司はそう言葉をかけて、空いている手でセイの頬を撫でるとそっと唇を重ねた。
「沖田先生...」
甘えたような控えめなセイの声がやけに色っぽく聞こえて総司は堪らずもう一度唇を重ねる。
今度はセイの顎を指で少し引くと舌を差し入れて思い付くままにセイを深く味わった。
口づけの合間にセイから漏れる吐息がますます総司の理性を崩していく。

ずっと、本当はずっと、あなたとこうしたかったんだ。


自分じゃない誰かが、自分の中で叫んでいてセイを求める。

無意識のうちに先ほど敷いてくれた布団の上にセイを押し倒してしまった自分にハッと気付いた総司が慌ててその身を引いた。
「あ...ごめんなさい...!止まらなく、なっちゃって...。今日会ったばかりなのに、おかしいですよね...」
自分の下にすっぽり収まる愛しい人を見ればその瞳からは涙が零れている。
怖い思いをさせてしまった、と総司が申し訳なさそうにセイの髪を撫でると、セイがふるふると頭を横に振った。
「おかしくなんか、ないです...。」
「え...?」
「私は、ずっと....沖田先生と...こうやって、抱き合いたかった。」
小さな声で、しかしはっきりとした口調でセイが総司の瞳をじっと見ながら伝える。
「神谷さん....」
「沖田先生...会いたかった、ずっと...」
まるで今話しているのはセイではないような、否、セイであることは確かなのだけれど。
まるでもう一人のセイが自分の中の誰かに、ずっと秘めていた思いを伝えている、そんな気がする。
総司は涙が出そうになりながら、私もです、とポソリと呟くともう一度、口づけを交わして、きっと、ずっと恋い焦がれていたのだろうその暖かな身体を、優しく、優しく抱いた。






※※※※※※※※※※※※※※※

↑最後の数行、自分で書いてて泣きそうになりました。自分だと妄想バッチリなので映像も二人の表情も完璧なので泣けてしまうのですね。ああ、私の頭の中を上手く表現できる才能がほしい...(T^T)
「つぐない 4」にも拍手ポチポチコメントもありがとうございました!!お返事、また後程書かせていただきますね。(*^^*)

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