◎短編

★曼珠沙華

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「貴女を抱かせてください。」

自分の口から信じられない言葉が飛び出した。
何を言っているのか自分でも理解できなくて、それでも言葉が止められない。
「何でも出来るんでしょう?それなら女としての貴女をくださいよ。」
きっと神谷さんから見た私はものすごく冷たい瞳をしているのだろう。
なんの感情も浮かばない、まるで死んだような瞳。
さすがの神谷さんも押し黙ったまま動かない。

きっとこれで大丈夫だ。
ただでさえ我が儘三昧の最近の私には嫌気がさしていた筈だし、こんな酷いことを言われたらさすがに彼女だって我慢の限界だろう。

きっと、ここから出ていく。

なのに。

私がじっと神谷さんを見据えていた視線を、何処かほっとした気持ちで布団の上へ戻すのとほぼ同時に

「はい。」

神谷さんは短い返事をすると、すっと立ち上がり袴の紐を解き始めた。
私の視界の端にストン、と神谷さんの袴が落ちる。

きっと神谷さんだって意固地になっているだけでもう少ししたら『出来ません』なんて泣き出すに違いない。
ここで止めるほど、私だって中途半端な気持ちでそんな意地悪をしたわけじゃない。

なのに神谷さんの手は止まるどころか次々と着物に着いている紐を解いていって、気がつけば肩から襦袢だけを羽織って私の目の前に座っていた。
このところ外に出ることも誰かに会うこともなかった為か着物の下には鎖帷子も晒もつけておらず前を合わせた襦袢の隙間から白い柔らかそうな肌がちらちらと見える。
最近では夢にまで見るようになってしまった、まだ誰も触れていないであろうその肌。

自分が言ったとはいえ、目の前の光景に言葉も出ずに呆然と神谷さんを見つめていると神谷さんが襦袢を落とそうと肩に手をかけた。

その手が、目に見えて震えているのが、分かった。


私は無意識にその手を握ると思い切り引っ張りそのまま彼女の身体を強く抱き締める。
いや。
強くなんてなかったかもしれない。
もう私には彼女の身体も、心さえも、強く抱き締める力なんて、

きっと、残っていないのだから。


「...もう、いいから...!」

やっとのことで絞り出した声は、自分でも驚くほど掠れていた。

抱き締めた小さな身体は、思っていたよりももっと、震えていた。


グスグスとしゃくりあげる声が肩の向こうから聞こえる。
私は襦袢の上から優しく、出来るだけ優しく神谷さんの背中を撫でる。

すると神谷さんの腕が私の背中に回って、同じように優しく撫でてくれた。

「...わたしは....先生の望むことなら、何でも出来るんです....」

神谷さんが消え入るような声で呟く。
私は小さく、頷く。


ずっと長いこと、考えていたことがある。
『先生の望むことなら何でも出来るんです』
神谷さんはそう言うけれど、それなら何故何度も『出ていきなさい』ときつく言ってもこの娘はここから離れないのだろう、と。


でも、漸く分かったんだ。
それはきっと、『出ていきない』という言葉が私の本心ではないから。
貴女には、それさえも見抜かれてしまうんだ、と思ったら笑顔と共にふ、と涙が溢れた。

あの時と同じように、愛しくて、愛しくて溢れる涙。

痩せ細った自分よりも、まだまだ小さなその身体を抱き締める。
今、自分が持っている出来るだけ強い力を、想いを振り絞って。

そうすることで、思い出したんだ。
貴女には、やっぱり一生敵わないってことをー。


貴女の事を『愛しい』と気付いたあの日から

想うのは、貴女ただひとりだけ。

願うのは『また出会えますように』


ただ、ひとつだけー。








※※※※※※※※※※※※※※
曼珠沙華(彼岸花)花言葉: 「思うのはあなた一人」「また会う日を楽しみに」

沖田先生命日(旧暦)に向けて。
それでもいいから、傍にいさせてあげて...という願いと共に。

雑記や過去作品に拍手ポチポチコメントもありがとうございました(*^^*)お返事次回書かせていただきますね。
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~ Comment ~

No title

>もう私には彼女の身体も、心さえも、強く抱き締める力なんて、

きっと、残っていないのだから。

この箇所が、すごく、すごく、切なかったです・・・
先生、体に力は入らなくても想念の力は絶対に弱ってないよーーーーと言いたい。
セイちゃんの心をぎゅっと抱きしめてあげて欲しい。

そういえば、あっという間にもうすぐ総司忌ですねえ。(と思ったら今年は8月26日開催なんですね!旧暦を新暦に換算するにしても遅めですね汗)

>原作の二人ってまたちゅーするんでしょうか
してほしい・・・!せめてあと1回・・・でもたしかに先生からはしないだろうから、セイちゃんが押し倒すしかありませんね(*ノωノ)

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