★雫

★雫 《朱》

 ←暖かいお言葉ありがとうございました。 →発売日が続きますね。そしてお返事。

注:本誌5月号を読んだあとに妄想したお話です。よって本誌のネタバレ含むところがあるかと思いますのでご理解のほど宜しくお願い致します(>_<)



※※※※※※※※※※※※※※※※

「...そんなに子どもを作れと言うならば私には心に決めた女子がいます。」
突然そんなことを話し出した総司の声はとてもしっかりとしていた。

考えてもいなかった言葉にその場にいた三人は驚きを隠せない。
何処かホッとしたような表現の近藤と土方とは正反対に緊張で身を強ばらせるセイ。

ずっと一番近くで総司の事を見ていたと思っていたけれど、そんな女子がいるとは全く気付かなかった。
もしかしたら自分の総司への恋心が彼の本当の心を見て見ぬ振りをしていたのかもしれない。

ぎゅっと唇を噛み締めながら俯いているセイの姿を総司はチラと見ると一つ、大きく深呼吸をする。
「誰なんだ、その女子というのは?ここに連れてこられるのか?」
身を乗り出して問いかける近藤。
土方はそのまま横で腕組みをしながら何やら考えている。
総司は小さく頷くといつもの人懐こい笑顔を三人に向けて口を開いた。
「はい...。『富永セイ』さん、という女子なんですが。」
「!!」
予想外の名前にセイが驚いて顔を上げるとそこには優しいいつもの笑顔を自分に向ける総司がいてセイは思わず涙が落ちそうになる。
「神谷さん...知っていますよね?連れてきて、もらえませんか...?」
「え、と...。あの...はい、承知しました....!」

セイは勢いよく立ち上がる。
そして部屋の襖を閉めるときに急に中を振り向くと深々と頭を下げて廊下を走って行った。
その時のセイの表情に土方の胸がドクンと鳴る。
以前総司の世話役に、とある女を紹介した時とは全く別物の涙を浮かべて、少し頬を染めながら微笑むその姿はまるでー。

土方はふぅ、と頭を抱えながら大きな溜め息をはく。
「...いつからなんだよ?」
「え?」
「その...おセイさんとやら、何時から想ってたんだよ。」
土方の怒ったような呆れたような口調に総司は(ああ、バレたな)と心のなかで舌を出した。
「そうですねえ...もう、五年も前かな...きっと。」
ふ、と思い出すのは『私はおとこです!』と強がるまだまだ子どものセイの姿。
そう。きっとー。
あの頃からずっと、本当は彼女の事を想っていたのだろうな。
ニコニコと嬉しそうな総司の顔を土方は睨み付けるように一瞥すると
「あー!もうなんだよ!」
突然大きな声を上げてその場にゴロンと横になった。
「歳?なんだい、いきなり。」
まだ事の成り行きが分かっていない近藤は不思議そうに土方の顔を覗く。
「総司...」
土方は天井を見上げたままボソリと低い声で呟く。
「はい...?」
総司は肩をすくめて小さな声で返事をする。
「お前、身体が戻ったらただじゃおかねぇからな。」
土方はそう言って身体を起こすと、両手で作った拳を総司のこめかみにグリグリと押し付けた。
「いたた...わかってますよぅ。」
ははは、と子ども時代に戻ったような笑顔を浮かべる総司。
土方の言葉には『だからさっさと身体を戻せ』とぶっきらぼうな優しさがつまっていて総司の胸がチクリと痛んだ。

半時も経っただろうか。
廊下から法眼の妻、トキの声が聞こえた。
「おセイさんを連れて参りました。」

部屋に少しの緊張が走る。
そしてゆっくりと襖が開きトキの後ろから可愛らしい朱色の着物を着た女子が俯きながらついてきた。
下を向いているその顔は遠目からでも真っ赤に色付いているのがわかる。

「ほら、おセイさん、ご挨拶なさって。」
トキに背中を押されセイが前に出る。
男三人が息を飲んでセイを見つめる中、よし、と覚悟を決めたセイが頭を深く下げた。

「...富永、セイと申します。...いえ、あの、本当は..」

セイが謝罪の言葉を口に使用としたとき、言葉を遮るように土方が勢いよく立ち上がった。

「...おセイさん、来てくれて礼を言う。今日は、仕事があるので失礼するがー。明日、きちんと話をさせてくれ。」

土方はそう言うとただならぬ雰囲気にオロオロしている近藤の腕を引きドスドスと足音を響かせて部屋の外へ出ていった。
パシンと襖が閉じる音を聞きながら部屋に残されたセイと総司、トキは黙り混む。
総司の表情を見る限り、しん、とした沈黙が決して嫌なものではない、と感じ取ったトキが、私も失礼しますね、と静かにその場を後にした。

二人きりになった部屋で総司がセイを見れば先程の血色の良さはどこへやら。青ざめた顔で少し震えているように見える。
総司はそっとセイの手を取ると
「大丈夫ですよ。」
と安心させるように優しく微笑んだ。
「でも..」
「土方さんは、貴女に甘いから。」
にこりと微笑む総司の言葉からは決してその場しのぎでないことが伝わってセイも漸く笑顔を絞り出す。
手を繋ぎながら今さらながらこんな成り行きになってしまったことが恥ずかしいやら面白いやらで二人はどちらからともなくクスクスと笑いだした。

「先生ってば、あんなこと仰ってこれからどうなさるんですか?あの、調子じゃしつこく『子どもはまだか』って聞かれますよ。」
セイが笑いながらそう言うと総司は繋いでいた手をグッと引っ張りセイの身体を自分の胸に引き寄せた。
「そうですね。子作り、頑張りましょうか。」
「もう、先生たら...」
未だに冗談だと決めつけているセイは笑いが止まらない。
そのセイの様子に少しムッとした総司は、そうだ、と意地悪な声を出す。
「子作り、私はこんな身体だし貴女に頑張ってもらわなきゃいけませんからね。分かります?」
「へ?私が、頑張る..?って、先生どこまで本気なんですか?」
「だから、最初から本気です。子作り、頑張りましょう?」
さっきまでニコニコと微笑んでいた総司の顔が急に真面目になりセイを見つめる。
その表情から総司が本気だと言うことが伝わって、セイはドクンと胸を鳴らして一歩、後ずさりをした。

「あの、あの...私ー。...どうやって頑張ればいいのか分からないので...法眼に聞いてきます...!!」

セイは自分の手を掴む総司を振り切って勢いよく立ち上がるとまた真っ赤な顔をして部屋を飛び出していってしまった。

「法眼に...何を...?」
見えなくなったセイの後ろ姿に総司は問いかける。
いつも、どこまでも真面目なセイが可笑しくて、でも愛しくて総司は一つ甘いため息を吐く。

もう二度と見れないと思っていたセイの女子姿。
何度となく想像していたけれど、それ以上に艶やかで美しかった。
これからあのひとが側に居てくれる、そう考えるだけで病なんて何処かに吹っ飛んでしまうくらいの気持ちになる。


ーなのに。

その気持ちとは裏腹に

総司が何処かスッキリとした気分で大きく深呼吸をすると

上手く息が吸えなくて、
ゴホッと聞きなれてしまった嫌な音の咳と共に

掌に朱い雫が舞ったー。





※※※※※※※※※※※※※※※※※※

少しずつ、少しずつ書きためて『いい作品になりますように』と心を込めて書きました。が。ちょっと切ないですね。書くにあたって今まであまり読み返せなかった先生病気発症後の単行本を読んでみたのですが、凄く読んでいて辛い部分は多いけれど先生の病が二人の絆を深めていることは確かなのだな、と思いました。強く想い合っているふたりだからこそ、ですね。
読んでくださりありがとうございました(*^^*)この後も宜しくお願い致します。
そして前回雑記へ拍手コメントありがとうございました!お返事次回に書かせてください(>_<)
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素晴らしいカミングアウト

とってもとっても素敵なお話ですね。ちょっぴり切ないけど、ほっこりしました。
こんな風にカミングアウトするなら、局長副長にも受け入れてもらえそうですね。
しかも先生が愛の告白・・・!
こんな2重にびっくりの告白の後にも、ちゃんと二人にしてあげる気の使い方がさすが土方さん。
局長は女子セイ=神谷に気付いたんでしょうか?(笑)

本誌の行方が非常に気になりますね~。
二人の幸せを祈っています。

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