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★雫

★雫 《暖》

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セイが女子として総司の側にいるようになって半月ほど経った頃、セイにお馬が来た。

何となく重い腰とお腹を擦りながらセイはあの日の事を考える。

最初は自分を側に置いたのは他の女子避けの方便だと思っていた。
『ずっと想っていた女子がいる』
その後総司の口から自分の名前が出るなんて思ってもみなかったしその時は舞い上がってしまったけれど、その後法眼の妻であるトキに事情を話して着替えを手伝ってもらっているときにふ、と我に返ったのだ。

あの先生の事だからきっと期待しても後でがっかりするだけだ、と。

総司に恋心を抱いてから何度期待しては落とされてきたか。
それを考えると嬉しさよりも後で傷つくことから回避するために、自分を守るためにセイは自ら予防線を張ってしまう癖がついてしまっていたのだ。

しかし近藤たちに挨拶を終えていざ二人きりになったときに総司は当たり前のように言った。
『さて子作り、頑張りましょうか』
一瞬驚いたものの、またいつもの冗談だと思って軽く流そうとセイが顔をあげるとそこには笑顔なのだけれどすごく真っ直ぐな真剣な眼差しをして自分をを見つめる総司がいてセイは息を飲む。
そして、本気かと問いかけると
『最初から本気です。』
と答えが返って来て今に至るのだ。

そのあと律儀に法眼に『子作りの方法』を聞いてきたセイは彼女なりに色々と試してはみたのである。
総司の言う通り彼は今は病床についているわけだし自分がなんとかしなくてはならないのはセイにだってよく分かっていたのだ。
しかしどんなに法眼に知識を詰め込まれてもいざ事に及ぼう、と思うと互いに恥ずかしさが勝ってしまったり上手くいった、と思っても互いにぎこちない行為のせいで最後まで行為を終える、ということはなかなか出来なかった。

元々恋人同士だったならばもっと上手くいったのだろうか。
セイはずっと総司に恋をしてきたし正直な所こんな風に触れあうことを想像したことはない、なんて言ったら嘘になる。
しかしただの師弟関係が長く、それも互いに経験不足の中での子作りは想像した以上に困難だった。
それにセイには心に引っ掛かっている事があった。
総司から、一つだけセイに頼みたい事がある、と最初の夜に言われたある言葉。
それは『決して口付けはしないこと』。
きっと病気をセイに移したくない、という気持ちから総司なりに一生懸命考えたのかもしれない。
でも、それを聞いたときセイの胸は痛んだ。
二人の関係は決して『恋人同士』ではなくて『子孫を遺すため』に自分は総司の側に女子として置かれているだけなのだから、と改めて言われた気がしてしまったのだ。
それでも総司の気持ちを一番に尊重してあげようとセイは小さく頷いた。

そんな中でもセイが武士姿で総司の側にいたときよりか幾分二人の間には甘い空気が流れていて、総司はセイを女子として大切に扱ってくれる。
それだけでもセイにとっては十分すぎるほど幸せだった。


子作りの行為がきちんと成されていないのだからお馬が来るのは仕方がないし当たり前の事だ。
まだ始まったばかり、と思う気持ちもあるが身体を重ねる度に総司の痩せていく身体を見る度に、セイの中に焦りも生まれていた。

早く、子どもを作らなくては、先生はー。



最近は夜そのまま一緒の部屋で寝ている事が多かったがお馬になってはそうもいかない、とセイは総司に今日から他の部屋で休む旨を伝えに向かう。
すると総司はきょとん、とした顔をして
「何でですか?一緒の部屋がいいです。」
まるで小さな子どものような事を言い出した。
「え、でも、あの...お馬が来てしまって...」
「そんなの関係ありませんよ。神谷さんが隣にいないと眠れません。」
何を赤子のような事を..と半ば呆れながらも嬉しさは隠せない。
仕方ないですね、とセイは顔を赤らめながら何時ものように総司の布団の隣に自分のふとんを敷いた。

考えてみたらこんな風にただ隣に寝るのは久しぶりで少し気恥ずかしくなる。
こんなことになってからは寝る以前に、よし、と気合いを入れて一応互いに子作りを頑張っていたわけで上手くいく、いかないは別にしてもとりあえず肌を触れあってから眠りについていたのだ。

セイはぎこちない二人の行為を思い出して小さくため息を吐く。
上手くいかないのは自分に魅力がないからじゃないか、とかそれ以前に行為自体もセイにとっては痛みを伴う苦痛なものでしかない。
法眼に読まされた春画なんかには女の人が本当に気持ち良さそうにしているけれど、そんな風に感じる事なんてこの先あるのだろうか。
セイが悶々と考え事をしながら寝返りをうって総司に背を向けると総司がそっとセイを後ろから抱き締めてきた。
「せ、先生?」
突然の事に驚いて総司の方を振り向こうとするが強い力で抱きすくめられて身動きが出来ない。
「先生、どうされたんですか...?」
セイは自分の腰に回された総司の手の甲を優しく撫でながら問いかける。
その優しい仕草に総司はセイを抱き締める力を更に強める。
「神谷さん...本当にありがとう...」
「え...?」
何の「ありがとう」なのか分からずにセイは首を傾げるがその様子に総司はクスリと笑うとちゅ、とセイの首筋に口付けを落とした。
セイの身体がビクリと跳ねる。
総司からこんな風に触れてくるのは初めてだった。
セイはどうしていいのか分からずにそのまま身を固める。
すると総司はもう一度今度はセイの耳朶に優しく口付けを落とした。
「ん..」
思わずセイから甘い声が漏れる。
その声に誘われるように総司の手が徐々に上がっていきセイの乳房を捉えた。
「あ、あの、先生....私、今日お馬なので...」
「...知ってます。触っちゃ、ダメですか...?」
「や、ダメ..ではない、ですけど...」
そんな押し問答をしているうちに総司の手がセイの襟から侵入して直接乳房を触り始める。
今までも触られた事はあったけれど何時もとはどこか違う触れ方に『今日はできない』と思うと一段と身体が熱くなってしまう。
そんなセイの気持ちを知ってか知らぬか焦らすように総司の手はセイの胸先に触れる。
我慢できずにセイから甘い吐息が漏れると
「神谷さんは本当に可愛い女子ですね。」
と総司が嬉しそうに囁いた。
「...先生、どうかされたんですか?」
セイが自分の胸元を弄ぶ手に自分の掌を重ねて困ったように尋ねる。
すると総司は、その小さくて細い指先に自分の指を絡めながらもう一度セイの耳朶に口付けを落とした。
「土方さんにね...色々と教えてもらったんです。」
「ふ、副長に!?な、何を話したんですか!?ま、ま、まさか私の閨の様子とか..!」
総司の甘えた声とは裏腹に驚いたセイが勢いよく振り向き大きな声を出した。
「ち、違いますよぅ。あのそんなに詳しく話してませんよ。ただ、その後どうかって聞かれたからあまり上手くいきませんって話したら色々と教えてくれたので...あの、その...私だけいい思いをしているような気がして...貴女にも気持ちよくなってほしくて...」
セイのあまりの剣幕に怯えたように、最後の方は消え入るような声で呟く総司。
セイは真っ赤な顔をして口をパクパクさせながら、落ち着け、落ち着けと心に言い聞かせる。
自分だって法眼に色々と聞いているし同じこと。
それに。

『貴女にも気持ちよくなってほしくて』

何もこんな日に試さなくても、と笑ってしまいそうになりながらも、そんな風に総司が思ってくれていたなんて、凄く恥ずかしいけれど、なんだかくすぐったくて嬉しかった。

「...先生...ありがとうございます...」
セイはふぅ、と溜め息を吐くと総司の背中を腕を回して胸に頬を寄せる。
随分痩せてしまったけれど、どんなに頑張って腕を伸ばしても回りきらないほど広くて逞しいその背中がとても、愛しい。
そんな事を考えていると総司も同じようにセイの身体に長い腕を回して優しく背を撫でてくれた。

ぎゅっと抱き合いながら、セイは『もっと触れてほしい』と思う。
そんな事今まで感じたことはなかった。
今までは子どもを作ることだけが目的で身体を重ねてきたけれど、こうして優しく抱き合うだけで触れあうだけで身体はもちろん心も、もっと満たされたいと思ってしまう。

セイがそっと総司の顔を下から見上げると総司も困ったように微笑みながらセイを見つめていた。

自然に吸い込まれるように、近付く二人の唇。
あと少しで柔らかな感触に触れる、と思うと総司がふ、と唇を離した。

「ごめんなさい...」

総司が目線を外して発したその言葉にセイはゆっくりと首を横に振る。
そしてもう一度その暖かな胸に頬を寄せた。

今なら、わかる。
こうして抱き合っていれば、わかる。
何故貴方が今、自分に口付けをしなかったのか。

それが、貴方の精一杯の愛の形だということが、今なら分かるから。

だから、寂しくなんてないー。


ぎゅうっと力を込めて互いの身体を抱き締める。
そしてセイの瞳から、切ないけれど暖かな涙が一粒、溢れた。




※※※※※※※※※※※※※※※※※
最近の本誌を読んでいて何度も期待しては落とされ、を繰り返していた私は(ああ、セイちゃんはこんなに辛い気持ちだったのだな)と改めて沖田先生の野暮天ぶりを嘆きました。もう、諦めよう、「風光る」は「沖セイ漫画」ではなくて「斎セイ漫画」だったんだ、と何度思えるように頑張ったことか...それでも「もしかしたら、次こそは..」と諦めずにいる私は本当に...なんというか...幸せになってくれよー!!沖セイー!!(T^T)
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