◎短編

◆天之美禄

 ←読書の秋に。そしてお返事。 →冬が始まるよ♪そしてお返事。
※隊士e様からのリクエスト『ベロベロ飲み会にて云々』のお話です(*^^*)




※※※※※※※※※※※
元はと言えばね、沖田先生が言い出したんですよ。
「神谷さんはお酒禁止!」
って。
私だってね、自覚はありましたから。
『酒を飲むと大トラになる』って兄上にも言われたこともありましたし三木先生と二人で飲みに行ったときも酔っぱらいすぎて危ない目にあった所を沖田先生に助けて頂いたこともありましたし。
だから『お酒禁止』って言われても仕方ないかな、と素直に思えましたよ。
飲めば美味しいって思いますけど元々そんなに好きじゃないし。
誘われれば飲みますけど一人酒するほどではありません。
なので『お酒禁止』でも別に辛いことは無かったんです。

でも。
今回ばかりはちょっとイラッとしてしまいました。
なので聞いてくださいますか!?

そもそも『お酒禁止』になった経緯はこうなんです。

一月ほど前でしょうか。
隊をあげての宴会が島原のお店で開かれていて珍しく局長や副長もいらして「無礼講だから」と結構な大騒ぎだったんです。
私は一番年若ですし最初の方はお酌だ、なんだって駆けずり回っていました。
忙しくしている方が性に合っていますし。
ただ、皆日頃の鬱憤を晴らすのに気持ちが大きくなっていたんでしょうね。
お酌に回る席毎に『お前も飲め』と勧められて気がついたらかなり飲まされていたんです。
そのうち私も楽しくなってきちゃってお酌もそっちのけで一番隊の仲間たちとワイワイ飲んでいたんです。
そしたら副長に、こっちにこいって身振りで呼ばれて。
徳利片手にしぶしぶ行ったんです。
「なんですか?」
楽しんでいるところを呼びつけられて私も少し口調がいつもにまして冷たかったかもしれません。
そんな私の気持ちに気付いているのかいないのか、副長は局長のお猪口を顎で指差して
「空いてるぞ」
って言ったんですよ。
いつもの私なら、ああそうですかって素直に局長にお酒を注いだと思うんです。
でも私もかなり酔っぱらっていましたしまずその副長の上からの態度が気に入らなくて
「ご自分でお酌されればいいじゃないですか」
って口答えしたんです。
今考えれば本当に馬鹿な話ですよ。
後で反省して副長にも局長にも勿論謝りに行きましたよ。
でもね、その時は副長も慣れないお酒を飲んでいて頭に血が上ったんでしょうか。
いきなり私の首に腕を回してグリグリ拳をこめかみに押し付けてきたんですよ。
痛い痛いって大騒ぎしても回りの皆も誰も助けてくれなくて。
副長に逆らうなんてとんでもない、と思って皆見ぬふりをしているのかと思ったら後で聞いたら『ただじゃれていると思った』ですって。
酷いですよね。本気で痛かったんですよ。
だから私も目の前にあった副長の腕に思い切り噛みついたんです。
「いってぇ!なにすんだ、てめえ!」
「副長が止めてくれないからでしょう!」
漸く副長の腕から解放されて真っ赤になってしまったこめかみを擦りながらそんなやり取りをしているとずっとそれまで遠くに座っていた沖田先生がすくっと立ち上がって無言で此方に歩いてきたんです。
その足音で直ぐに分かりましたよ。
あ、怒ってるって。
「神谷さん、ちょっとあなた此方に来なさい。」
「えっ、ちょっと沖田先生..!」
沖田先生にまるで動物みたいに首根っこを捕まれてズルズル引きずられながら部屋の外へ出されました。
冷たい廊下にドサリと投げられて恐る恐る沖田先生の顔を見上げるとそれはまあ、恐ろしい顔をしていました。
「ごめんなさい...」
何か言われる前に、と思って咄嗟に謝ったのですがそれがまた彼のかんにさわったのでしょうか。
「何がごめんなさい、なんですか?」
仁王立ちをして正座する私を見下ろす沖田先生はまるで鬼です。前に本で見た悪魔というものにも似ています。
私はますます小さくなって頭を項垂れました。
「局長と...副長に..失礼な事を...」
ボソボソと私が呟くと沖田先生は大きな溜め息を吐きながら座り込んで私の顔をじっと見つめました。
「それだけですか?」
他にも何かしただろうか、と暫く考えましたが思い浮かびません。
副長に絡まれるまでは私もちゃんと働いたつもりですし楽しく飲んでいただけです。
答えを出さない私に沖田先生はまた大きな息を吐きました。
そして近くにいた店の物を呼び止めると
「すみません。空いている部屋はありませんか?物置でも構いません。」
と冷たい声で言いました。
しゅん、として泣いている私と沖田先生の恐ろしい表情を見てお店の方もただ事じゃない、と思ったんでしょうね。
「へぇ。」
と震える声で返事をすると小さな空き部屋をすぐに用意してくださり私はまた引きずられるようにその部屋へ連れていかれました。
ぽいっと猫でも投げるように部屋の中へ放り出されると
「暫くここで頭を冷やしなさい。」
そうピシャリと言い捨て沖田先生は行ってしまいました。
一人残された暗い部屋で私はめそめそと泣き続けました。
お酒を飲むと涙もろくなりませんか?
何がそんなに悲しいのかわからないけれど他の部屋から聞こえてくる楽しげな笑い声が私の寂しさをますます増長させて涙が暫く止まりませんでした。

どのくらい時が経ったのでしょうか。
気がついたら私は寝てしまったようです。
図太いなんて言わないでくださいね。
だってお酒を飲みすぎたんですから。それは眠くもなります。
ふ、と目が覚めると目の前に沖田先生がいました。
「せ、せんせえ!」
慌ててヨダレを拭きながら起き上がるとさっきとはうってかわって先生の表情が和らぎました。
「反省しましたか?」
「はい...」
正直な所あれからすぐに寝てしまったので反省する時間もなかったような気もします。
でも心底反省している、という顔をして頷きました。
すると沖田先生は、ぎゅっと私の身体を抱き締めて、よしよし、と頭を撫でてくれました。
先程とのあまりの違いに私は不思議に思いながらもその心地よい刺激に身を任せていると
「神谷さんは暫くお酒禁止ね。」
何処か甘い声で沖田先生が囁きました。
私がコクンと素直に頷くと
「いい子だ」
と嬉しそうに笑い、そこらじゅうに口付けの雨を降らせます。
まだお酒の残っている身体はあっというまに高ぶってしまって私は夢中で先生にすがり付きました。
すると先生はもう何も怒っていないようで何時ものように優しく、私を抱いてくれました。
何時ものようにってどんな風にって?
そ、そんなのどうだっていいじゃないですか。
とにかく優しいんです。

甘い時を過ごして店の外に出るともう空が白々と明るくなっていました。
手を繋いで屯所に帰る途中
「後で局長と副長に謝りに行きます。」
私がそう言うと沖田先生はにこりと笑って頭を撫でてくれました。そして
「お酒は禁止、ですよ?」
ともう一度釘をさされたのです。


それから10日も経った頃でしょうか。
今宵はまた宴会です。
今夜の会は前回のように大きなものではなくて一番隊だけの集まりでした。
いつも生死を共に戦っている気のおけない大切な仲間たちとの宴会はそれは盛り上がっていました。
勿論私は一滴も飲んでいません。
だって沖田先生と約束をしましたから。
それに私はちょうど忙しかったんですよ。
昼間に副長からお使いを頼まれて黒谷まで文を届けに行っていたら屯所に戻ったのはもう日も暮れた頃で一番隊の部屋ではもうほぼ出来上がっている人たちばかりでした。
「おお~神谷!待ってたぞ~!」
相田さんたちが声をかけてくれます。
輪の中にちょこん、と座ると隣の人から酒を勧められましたが丁重にお断りしました。
お腹は減っていたので残っていたおかずを摘まんでいると沖田先生も相当酔っぱらっていることに気がつきました。
素面の状態で酔っぱらいを見る、というのは中々面白いものですね。
普段は見られない一面なんかも垣間見れてお酒を飲んでいなくてもその場は楽しいものです。
私がニコニコと皆の様子を見ていると
「あれ?もう酒がねえよ。」
と誰かが言い出しました。
そのうちに「こっちもない」「こっちなんてとっくにない」と口々に皆、言い出して
「じゃあ私が買ってきます。」
私がそう言って立ち上がると皆「いいよいいよ」と遠慮してくれたもののどうみても顔には『まだ飲み足りない』と書いてあるのでそのまま部屋を出ていきました。

外はもう暗くなっていたので門番に灯りを借りて馴染みの酒屋へ急ぎました。
酒屋までは直ぐなんです。
四半時もかからないでしょうか。
しかし、屯所から出て直ぐの角で嫌な予感がしました。
誰かに付けられている。
ピリリと緊張した空気を感じて私は一瞬足を止めますがこんな町中で斬り合いになってしまっては迷惑がかかります。
私は付いてくる誰かを誘導するように細い静かな小道へ入りました。
そしてさっと物陰に隠れ後から付いてきた輩を待ち伏せします。
「こっちに行ったぞ」
「新撰組の屯所から出てきたよな?」
コソコソと話し声が聞こえ、その訛りから長州者だと瞬時に分かりました。
その気配がすぐ近くまで来たとき。
「何者...」
私が物陰からさっと飛び出すよりも早く何者かが空から舞い降りてきました。
まさか、と思うでしょう?
でも本当なんです。本当に空から舞い降りてきたんですよ。
「新撰組一番隊組長、沖田総司参る!」
「な、何.!?」
「へっ!?沖田先生!?」
突然現れたのはなんと先程までベロベロに酔っぱらっていた沖田先生でした。
何が起きたのか訳のわからないうちに沖田先生は長州者の二人組をいとも簡単に斬り付けます。
構えた刀もそのままに倒れている敵をぼんやりと見つめていると
「神谷さん!縄!」
と沖田先生に言われて慌てて縄代わりに、と手拭いで二人の腕を縛りました。
「ふうー。屯所に知らせてきてくれますか?」
私は、はい、と返事をすると酒を買いに来たことも忘れて慌てて屯所に戻ります。
その途中で巡察中の三番隊に出会って現場へ一緒に行ってもらいました。

「私たちは非番なので、あとは宜しくお願いしますね。」
斬り合いの始末をある程度済ませて沖田先生がそう三番隊の皆に告げて立ち上がります。
私も慌てて立ち上がりました。
「沖田先生、どこ行かれるんですか?」
屯所とは反対方向にずんずん歩いていく沖田先生を私は息を切らせて追いかけました。
「二人で飲み直しませんか?」
沖田先生が振り返りにこりと笑います。
「え、でも私はお酒禁止だって..」
「あれー?そうでしたっけ?」
「そうですよ!沖田先生がそう仰ったんじゃないですか!」
「そんな事言ったっけなぁ。私はてっきりまた飲みすぎて大トラになった神谷さんが誰かを襲ったりしないか心配で追いかけてきたのに。」
カラカラと笑いながら沖田先生は私の手をそっと握ります。
「もうっ!今日は一滴も飲んでいません!」
私がぷう、と頬を膨らませると沖田先生はますます大きな声で笑いました。
「私と二人の時だけは飲んでもいいですよ。」
沖田先生が耳元でこそっと囁くと私の身体の熱が上がります。
「そ、そんな勝手な...」
私が顔を赤くしてそっぽを向くと沖田先生が私の肩を抱き寄せました。
「あんな可愛い神谷さんを見ていいのは私だけなんです。」
沖田先生はそう言うとちゅっと私の頬に口付けを落とします。
「!」
誰が見ているか分からない外でこんなことをされたのは初めてだったので私は大層驚いて頬を押さえました。
触れられた箇所が沸騰しそうなくらい熱いです。
困った顔で立ち止まる私の肩をぐっと抱き寄せて沖田先生は足早にいつも二人で過ごす馴染みの茶屋へ向かいます。
これからの事を考えるとどうしてもニヤニヤ笑ってしまうのを隠すように私は俯きながら先生の着物をそっと掴みました。

先生と二人ならお酒を飲んでもいいだなんて、なんだか勝手な話ですし上手く丸め込まれたような気もします。
でも許してしまうのは恋心ゆえ、なんでしょうか?
あれ?私、イラッとしていたから話していたはずなのに。
なんだか結局のろけてしまって申し訳ないです。

とりあえず、私は幸せです。







※※※※※※※※※※※※※※※※
最後のリクエストネタでした!「みんなベロベロの飲み会で~」とそのあとの内容も台詞までかなり具体的に書いて頂いたこのリクエスト。もう頂いたネタだけで十分萌えてしまう内容だったのでこれをどう広げるか?が難しかったです。それでちょっとおふざけ的なお話にしてみました(*^^*)
浪士e様リクエスト本当にありがとうございました!
前雑記にも拍手やコメントありがとうございました。次回にお返事書かせて頂きますね(о´∀`о)
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