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◆鬼神

◆鬼神 五

 ←寒いよぅ。そしてお返事。 →各々、ぬかりなく。そしてお返事
朝目覚めると藤田は既に着替えを終えて布団を畳んでいて、総司と目が合うと急に頭を深々と下げた。
「昨日は本当に不謹慎な冗談を言ってしまってすみませんでした。」
まだ布団の中にいるのに突然改まって謝罪をされて総司は困った顔をして頭を振る。
「いえ、もういいんです。私も大人げない態度を取ってしまって申し訳ありませんでした。」
総司の言葉にホッとした藤田は漸く頭を上げると「食事を頼んできます」と足取り軽く部屋を出ていった。

その姿後ろ姿をぼんやりと見ながら(悪い人ではないのだろう)と総司は思う。
しかし昨日の藤田の言葉を思い出そうとすると未だに寒気がして心がざわついた。

セイが自分ではない誰かに犯される。
その姿を想像しようとするだけで、吐き気がした。


今日はもう屯所を出発してから三日目だ。
早ければ今日の昼過ぎには指定された大江山の麓に着くだろう。
セイは無事なのだろうか、という不安は勿論、総司にはもう一つ気になる事があり、それが彼を更に焦らせていた。



宿を出発して暫くすると雨が降ってきた。
目指している山の方角からゴロゴロと雷の音も聞こえてきてこれから雨が強くなりそうだから、と総司たちは足を早める。
この雨だと後から宿を出発する予定の山崎たちも少し時間をずらすかもしれない。
ふ、とそう思い付くと総司の胸がドクンと音を立てた。

「沖田先生、どうされました?」
急に立ち止まってしまった総司を心配して藤田が振り向く。
総司はドクンドクンと高鳴る心臓をグッと押さえつけると
「いえ、何でもないんです。..急ぎましょう。」
にこり、と微笑んだ。


やっとのことで大江山の麓に着いた時、総司も藤田も着物は勿論下衣までびしょ濡れになってしまっていた。
屋根のように少し突き出ている岩場の下で藤田が着物を絞っていると
「後は私が一人で行きますから。」
と総司が呟いた。
「えっ、待ってください!沖田先生一人で行かせてしまったら俺が怒られます!下手したら切腹させられますって..!」
焦った藤田が冗談めいた顔で自身の腹を切る真似をする。
総司はその様子を見て
「..そうですね..。冗談では、すまないかもしれませんね..。」
とクスリと笑う。
その声は自分でもゾッとするほど冷たかった。

そう。
冗談では、すまない。
貴方の昨日の、言葉もー。

歩いていたときは忘れていたのにふ、と昨日の藤田の言葉が脳裏に浮かんで何かが壊れる音が総司の中で響いた。
次の瞬間。
無意識に動いた身体は自分自身なのか。

それとも、此処に住む鬼たちが突き動かしたのだろうかー?


総司が我に返ると目の前にはその場に倒れる藤田の姿。
雨水と共に真っ赤な血が派手な水音を立てながら岩場を勢いよく流れていく。

「....」

総司は無言で刀の飛沫を払って鞘に納めると、まだ濡れたままの藤田の衣服をもう動かないその身体にそっとかけてやる。
『そんなことをしてせめてもの罪滅ぼしのつもりなのか』
どこからかそんな風に嘲笑う声が聞こえてくる気がした。

「..悪い人では..なかったんですけれど..」

どうしても許せなかった、というのが人を斬る理由になるのだろうか。
きっと藤田はセイのことを本当に抱きたい、なんて思っていなくてきっとその場の冗談でしかなかったのだろう。
それも総司には分かっていた。
それでも一度付いてしまった火を消すことは困難で。
自分はこんな人間だったのか、と思う。

いや。
人間では、ないからできるのだ。
私はきっと、愛する人の為にならば

鬼に変幻するのだろう。


『鬼たちは最初は比叡山に棲んでいて、京の民に騙されて居場所を追われてしまい大江山に移り住んだ』
出発前に山南から聞いた「大江山」の内容を思い出す。

『居場所』を追われたのは誰なのか。

考えてみれば、セイたちがいなくなった時点でこの縁談を破談するつもりだとは皆、知らなかったはずだ。
近藤に縁談を断りたい、と話して次の日直ぐに三人はいなくなったのだから。
そうなると縁談が進む事で『居場所』を追われる事を恐れたのは誰なのか、という話になる。

女は縁談がうまくいこうと破談しようと『居場所』はそう変わらないはずだ。
縁談が纏まれば新しい居場所を手に入れる事ができるし、破談になれば相手の女は元の居場所に戻ればいいだけなのだから。
どちらにしても女は『居場所』を追われる立場では、ない。

ならばあのお付きの男どうだろうか。
壬生寺で出会ったときの自分を見るあの鋭い目線から直ぐに感じたのは敵対心。
何があろうと女を守りぬく、という強い気持ち。
昔、セイと想いが通じ合う前の自分と重なった。
きっと彼は、叶わぬ想いと分かってはいながらあの女に心を寄せているのだろう。
それならば、自分と女との見合いが進めば彼は何かしら『居場所』を奪われる立場にいる。

あとは、セイ。
縁談の話をした時のセイの寂しそうな表情を思い出す。
総司のことを責めたり、怒りをぶつけるわけではなくて、ただ、ただ寂しそうな、諦めたような瞳。

局長の命であれば断ることは難しいということも、家族が出来ればセイ自身がどのような立場に置かれるかということも彼女は瞬時に察したはずだ。
とても頭の良いひとだから。


そう。今回の縁談が纏まれば一番今の『居場所』を無くしてしまうのは、セイ。
そんなこと、本当は最初からどこかで、気付いていた。


(血の匂いがする。)

藤田のものとは違う、血の匂いに誘われるように総司は先を急ぐ。
セイが自分のように『鬼』になってしまわないように。
セイの居場所は此処なのだ、と伝えなければ。

鬱蒼とした森林の中を総司はひたすら前に進む。
一本だけ道のような人が歩いた跡がありそこを辿っていくと古ぼけた一軒の小屋に着いた。

総司が扉を開けようとした時

「沖田先生..?」

愛しいひとの、声がした。




※※※※※※※※※※※※※
私は今やけ食いをしています。何故なら娘がインフルエンザにかかり週末の京都旅行が中止になったからです(T^T)仕方がない。仕方がないし別に誰が悪いってわけでもないし..だからやけ食いをして心を落ち着かせているのです。。

さて前雑記にも拍手ポチポチコメントもありがとうございました!お返事次回に書かせていただきますね(*^^*)皆様もインフルエンザはもちろんお風邪などひきませんように。
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